熱力学の解答付き演習

並進、回転、熱運動

演習 14 · レッスン 4 — 熱力学第一法則

  • ケーニヒの定理
  • 回転
  • 運動エネルギー
  • 内部エネルギー
  • 摩擦

問題

質量 の 個の粒子からなる系があり、全質量は 、重心の位置は 、速度は である。 とおき、速度を次のように分解する:

全体の角速度 は、残りの運動が全体としての角運動量をもたないように選ぶ:

恒等式 を認める。ここで は重心のまわりの慣性テンソルである。

  1. を展開し、三つの交差項がゼロであることを示せ。これより、並進、全体の回転、残りの運動への分解を導け。
  2. 全体の並進と回転を巨視的運動として数える規約のもとで、内部エネルギーに含まれる運動エネルギーはどれか。熱運動だけを残すには、重心系に移れば十分か。
  3. 質量 、半径 の一様な円板が、固定された軸のまわりを初め角速度 で回転している。その慣性モーメントは である。ブレーキがこれを停止させる。円板とブレーキからなる系は断熱されており、静止した支持体は仕事を一切与えない。散逸したエネルギーはすべて、一定の全熱容量 をもつこの系の中にとどまる。系の内部エネルギー変化と温度上昇を求めよ。
  4. 、、、 のとき、変換されたエネルギーと温度上昇を計算せよ。このエネルギーは熱として系の境界を横切ったのか。

ヒント

ヒント
とスカラー三重積の恒等式 を用いる。制動の間は が保存される。

詳しい解答

解答
問1。 重心の定義より である。したがって

各二乗を展開すると

第一の交差項は重心の定義によって消える。 第二の交差項は、残りの運動の運動量がゼロであるため消える。 第三の交差項については、スカラー三重積により

慣性テンソルについて与えられた恒等式を用いると、残るのは

問2。 この規約では、内部エネルギーへの運動エネルギーの寄与は最後の項 である。内部エネルギーには、内部の位置エネルギーや、 存在すればその他の内部自由度も含まれる。重心系に移ると並進の項は消えるが、 全体の回転の項は残る。したがって、固定軸のまわりを回転する円板は、 重心が静止していても巨視的な運動エネルギーをもつ。

問3。 円板とブレーキからなる系の境界を横切る熱と仕事はゼロである。 支持体からの力は角運動量を伝えうるが、その作用点は静止しているので仕事を伝えない。 その他の巨視的エネルギーの変化を無視すると、エネルギー保存より

円板は停止するので、 である。 したがって

内部の熱平衡に達した後は、熱容量一定のモデルにより となるから、

摩擦は、秩序だった運動のエネルギーを系内部で内部エネルギーに変換する。

問4。 慣性モーメントは である。よって

であるにもかかわらず系は温まる。このエネルギーは熱として境界を横切ったのではない。 初めから回転の運動エネルギーとして系の中に存在していたのである。