熱力学の解答付き演習

宇宙の光子気体

演習 39 · レッスン 7 — 数学的構造:基本関係式

  • 光子気体
  • 放射
  • 宇宙マイクロ波背景放射
  • 基本関係式
  • 断熱膨張
  • 同次関数
  • ゼロの化学ポテンシャル

問題

宇宙の初期には、物質は原子核、電子、光子からなる高温のプラズマであった。 ごろに最初の原子が形成され、光子は自由になる。 この時点で光子気体は温度 で平衡にあり、その後、宇宙の膨張にともなって可逆断熱膨張をすると考える。 その基本関係式を

と認める。ここで は次元をもつ正の定数である。 エントロピーは光子数 に依存しない。この数は保存されないからである。

  1. 一次同次関数の定義を述べ、 がそれであることを示せ。
  2. を固定して、 を の関数として概形を描け。この関数は凹か。考察せよ。
  3. の導関数から 、、 を求めよ。特に と を示し、 の値について考察せよ。
  4. この気体について第一法則を書き、可逆断熱膨張の場合に特化せよ。これより、この過程に沿った と の関係を導け。
  5. 膨張に沿って が一定に保たれることを導け。
  6. と の関数として表したエントロピーから、この結果を直接導け。
  7. 光子気体は現在 で観測されている。これが宇宙マイクロ波背景放射である。放出以来、宇宙の体積は何倍になったか。

ヒント

ヒント
エントロピー表示では 、 、 である。 問4では、可逆断熱過程は を満たすので となる。変数を分離せよ。

詳しい解答

解答
問1。 多変数の関数 が一次同次であるとは、任意の に対して が成り立つことである。ここでは

したがって、光子気体のエントロピーは示量的である。

問2。 を固定すると、 は に比例する。その一階導関数

は正である。 は とともに増加し、温度は正である。二階導関数

は負であり、 は について凹である。曲線は原点から鉛直な接線で出発し、 その後、弦より上にとどまりながら曲がっていく。この凹性は、光子気体の平衡の安定性を表している。

問3。 問2より

を固定した についての導関数は

ところで なので、

最後に、 は に依存しないので である。 光子の化学ポテンシャルはゼロである。光子の数は保存されないので平衡状態で自由に調整され、 光子を一つ加えても何のコストもかからない。

問4。 項 はゼロなので、微分形の基本関係式は と書ける。可逆断熱膨張では なので、 を用いて

初期状態から膨張途中の任意の状態まで積分すると 、すなわち

問5。 を で置き換える:

は定数なので は一定であり、したがって も一定である。3乗すると となる。

問6。 を で置き換えて、 を と で表す:

可逆断熱膨張は等エントロピー過程である。 は一定であり、したがって も一定である。 問5の結果が直接得られる。

問7。 は保存されるので、

放出以来、宇宙の体積は10億倍になった。これは距離にして 倍に相当する。 約 で放出され、膨張によって冷えた放射が、現在 で測定されている宇宙マイクロ波背景放射である。