解答
図 1
問1。 図では二つの成分を区別し、Aだけが通過できることを示す。P∗=N0kBT0/V0 とおく。初め各区画の粒子数は 3N0 である:
P1,i=V0(2N0+N0)kBT0=3P∗,P2,i=V0(N0+2N0)kBT0=3P∗.
Aの分圧にはAの粒子だけを数え、左側は 2N0、右側は N0 である。初め P1,i=P2,i=3P∗ だが、pA,1,i=2P∗、pA,2,i=P∗ である。よって μA,1−μA,2=kBT0ln2>0 で、Aは初め左から右へ移動する。同温度で dNA,1<0 なら全エントロピー変化 (μA,2−μA,1)dNA,1/T0 は正である。全圧の等しさだけでは拡散は止まらない。化学ポテンシャルの差では二つの μA∘(T0) が相殺され、対数は kBT0ln(pA,1,i/pA,2,i)=kBT0ln2 にまとまる。
問2。 全エネルギーとAの総粒子数は保存され、各側のBの粒子数は一定である。
dU2=−dU1、
dNA,2=−dNA,1、
dNB,1=dNB,2=0 を用いると、
dSj=TjdUj−TjμA,jdNA,j(j=1,2).
膜が固定されているので体積項はゼロである。足し合わせると、
dStot=T1dU1−T2dU1−T1μA,1dNA,1+T2μA,2dNA,1.
係数をまとめて、
dStot=(T11−T21)dU1+(T2μA,2−T1μA,1)dNA,1.
熱伝導とAの移動が許されるので、その変分は独立に調べられる。したがって停留条件は 1/T1−1/T2=0、すなわち T1=T2 を要求し、次に (μA,2−μA,1)/T=0、すなわち μA,1=μA,2 を要求する。P1=P2(膜は固定)も μB,1=μB,2(Bは通らない)も要求しない。
問3。 初期全エネルギーは
9N0kBT0 で、総粒子数は
6N0 に保たれる。実際
Ui=(3/2)(3N0+3N0)kBT0=9N0kBT0 である。共通の最終温度
T では
Uf=(3/2)(6N0)kBT=9N0kBT となる。等式
Uf=Ui より
T=T0 を得る。Aの化学ポテンシャルが等しいことは
kBT0lnp∘pA,1=kBT0lnp∘pA,2.
kBT0 で割って指数関数を取ると pA,1=pA,2 である。体積が等しいので因子 kBT0/V0 が消え、NA,1=NA,2 となる。NA,1+NA,2=3N0 なので各側は 3N0/2 である。Bの粒子を加えると、
P1,f=V0(3N0/2+N0)kBT0,P2,f=V0(3N0/2+2N0)kBT0.
したがって、
P1,f=25P∗,P2,f=27P∗.
膜の支持部がこの圧力差を支える。a=NA,1、NA,2=3N0−a とおき、温度と体積を固定すると問2より
dadStot=T0μA,2−μA,1=kBlnpA,1pA,2=kBlna3N0−a.
温度が等しく dU1+dU2=0 なのでエネルギー項は相殺される。もう一度微分するため ln(3N0−a)−lna と書く。その微分は −1/(3N0−a)−1/a である。したがって
dadStot=kBlna3N0−a,da2d2Stot=−kB(a1+3N0−a1)<0.
等分配は 0<a<3N0 上で唯一の最大値を与える。
問4。 体積に関する停留条件として
P1=P2 が加わる。
dStot に加える項は
(P1/T1−P2/T2)dV1 である。その係数がゼロで、
T1=T2 なので全圧の等しさを要求する。問3と同じエネルギー収支から、最終温度は再び
T0 である。
pA,1=pA,2 なので全圧の等しさは
pB,1=pB,2 を導く。Bは通過しないため、
V1N0=V22N0,V1+V2=2V0,
よって V2=2V1、次に 3V1=2V0、すなわち V1=2V0/3、V2=4V0/3 である。Aの分圧の等しさから NA,1/V1=NA,2/V2、したがって NA,2=2NA,1 である。和が 3N0 なので NA,1=N0、NA,2=2N0 を得る。最後に Pf=(N0+N0)kBT0/(2V0/3)=3P∗ である。結果は
V1=32V0,V2=34V0,NA,1=N0,NA,2=2N0,Pf=3P∗.
Bの分圧が等しいのは、ここでは他の条件と理想モデルの帰結であり、Bの交換が課す条件ではない。Aの物質量はもはや等しくなく、濃度、したがって分圧が等しくなる。
問5。 圧力を計算するため体積をSI単位に直す:
V0=10 L=10−2 m3。定数
NA は物質量を粒子数に換算する:
N0=NAn0、ただし
n0=1,0 mol である。まず
R=NAkB=(6,022×1023)(1,380649×10−23)≃8,314 Jmol−1K−1.
N0kB=n0R を使うと、問1で導入した圧力尺度は
P∗=V0N0kBT0=V0n0RT0≃10−21,0×8,314×300=249420 Pa≃2,494 bar,
となる。これは 1 bar=105 Pa による。この圧力は計算用の尺度であり、それ自体が区画の全圧ではない。
固定膜。 各体積は
10 L のままである。問3より
NA,1=NA,2=3N0/2 である。粒子数からモルへ換算するには
NA で割る:
nA,1=nA,2=2NA3N0=23×1 mol=1,5 mol.
Bは膜を通らず、左に 1 mol、右に 2 mol 残る。したがって全物質量は 2,5 mol、3,5 mol である。T0=300 K において式 P=nRT/V をそれぞれ適用すると、
P1,f=10−2(1,5+1)×8,314×300=623550 Pa≃6,24 bar,P2,f=10−2(1,5+2)×8,314×300=872970 Pa≃8,73 bar.
全圧は異なり、膜の固定がこの状態を保つ。一方、Aは同じ体積、物質量、温度にあるため分圧は等しい。
可動膜。 問4より、
V1,f=32V0=32×10≃6,67 L,V2,f=34V0=34×10≃13,33 L.
和は容器の体積 20 L のままである。Aの粒子数は NA,1=N0、NA,2=2N0 となる:
nA,1=NAN0=1 mol,nA,2=NA2N0=2 mol.
Aの全物質量 3 mol が確かに保存される。Bを加えると各区画の気体は 2、4 mol である。丸める前の正確な体積を使う:
P1,f=(2/3)×10−2(1+1)×8,314×300=748260 Pa≃7,48 bar,P2,f=(4/3)×10−2(2+2)×8,314×300=748260 Pa≃7,48 bar.
両方の計算で同じ全圧を得る。これは固定を外した膜の力学的平衡が要求する結果である。