熱力学の解答付き演習

気体のエントロピー:熱容量が TT に依存する場合

演習 19 · レッスン 6 — 熱力学第二法則

  • 気体
  • 可変熱容量
  • 内部エネルギー
  • エントロピー
  • 等積加熱
  • 積分

問題

状態方程式が PV=nRTPV=nRT である nn モルの気体を考える。対象の温度範囲で、定積モル熱容量は cV(T)=A+BTc_V(T)=A+BT とする。AA と BB は正の定数である。物質量が一定なら内部エネルギーは温度だけに依存すると認める。この範囲内の基準温度 Tref>0T_{\mathrm{ref}}>0 における値を UrefU_{\mathrm{ref}} とする。

  1. 内部エネルギー U(T)U(T) と、温度 TiT_i から TfT_f までの変化を求めよ。
  2. 局所的に可逆な微小変化について、受け取る熱量を表し、dS\mathrm dS を TT、VV、dT\mathrm dT、dV\mathrm dV の関数として求めよ。
  3. 二つの平衡状態 (Ti,Vi)(T_i,V_i) と (Tf,Vf)(T_f,V_f) の間のエントロピー変化 ΔS\Delta S を求めよ。結果は二状態を結ぶ変化の可逆性または不可逆性に依存するか。
  4. 気体を温度 TfT_f の熱浴により、体積一定で TiT_i から Tf>TiT_f>T_i まで加熱する。気体と熱浴の全体は孤立し、仕事は交換されない。気体と熱浴が受け取る熱量、次に生成エントロピーを求めよ。後者を符号の判定できる積分で表せ。

ヒント

ヒント
dU=ncV(T) dT\mathrm dU=nc_V(T)\,\mathrm dT から出発し、各項を別々に積分する。問2では第一法則と dS=δQrev/T\mathrm dS=\delta Q_{\mathrm{rev}}/T を使う。問3では等積過程に等温過程が続く可逆経路を選ぶ。実際の加熱中、熱浴の温度は一定である。

詳しい解答

解答
問1。 与えられたのはモル熱容量なので、nn モルの全熱容量は ncV(T)nc_V(T) である。UU は TT のみに依存するため、

dU=ncV(T) dT=n(A+BT) dT.\mathrm dU=nc_V(T)\,\mathrm dT=n(A+BT)\,\mathrm dT.

積分変数を τ\tau として、TrefT_{\mathrm{ref}} から TT まで積分する:

U(T)−Uref=n∫TrefT(A+Bτ) dτ=n[Aτ+B2τ2]TrefT=nA(T−Tref)+nB2(T2−Tref2).\begin{aligned} U(T)-U_{\mathrm{ref}} &=n\int_{T_{\mathrm{ref}}}^{T}(A+B\tau)\,\mathrm d\tau\\ &=n\left[A\tau+\frac B2\tau^2\right]_{T_{\mathrm{ref}}}^{T}\\ &=nA(T-T_{\mathrm{ref}})+\frac{nB}{2}(T^2-T_{\mathrm{ref}}^2). \end{aligned}

UrefU_{\mathrm{ref}} を加えると U(T)U(T) を得る。ΔU=U(Tf)−U(Ti)\Delta U=U(T_f)-U(T_i) を求める際には基準状態の項が相殺される:

ΔU=nA(Tf−Ti)+nB2(Tf2−Ti2).\boxed{\Delta U=nA(T_f-T_i)+\frac{nB}{2}(T_f^2-T_i^2).}

ΔU=ncV(Tf)(Tf−Ti)\Delta U=nc_V(T_f)(T_f-T_i) と書いてはならない。熱容量は加熱中に変わるため、積分の中に置く必要がある。

問2。 局所可逆変化で受け取る仕事は δW=−P dV\delta W=-P\,\mathrm dV である。第一法則より

dU=δQrev−P dV,δQrev=dU+P dV.\mathrm dU=\delta Q_{\mathrm{rev}}-P\,\mathrm dV, \qquad \delta Q_{\mathrm{rev}}=\mathrm dU+P\,\mathrm dV.

dU\mathrm dU に前の結果を、PP に nRT/VnRT/V を代入する:

δQrev=n(A+BT) dT+nRTV dV.\delta Q_{\mathrm{rev}}=n(A+BT)\,\mathrm dT+\frac{nRT}{V}\,\mathrm dV.

局所可逆性により dS=δQrev/T\mathrm dS=\delta Q_{\mathrm{rev}}/T と書ける。各項を TT で割ると

dS=n(AT+B)dT+nRV dV.\boxed{\mathrm dS=n\left(\frac AT+B\right)\mathrm dT +\frac{nR}{V}\,\mathrm dV.}

問3。 体積一定で (Ti,Vi)(T_i,V_i) から (Tf,Vi)(T_f,V_i) へ、次いで温度一定で (Tf,Vi)(T_f,V_i) から (Tf,Vf)(T_f,V_f) へ進む可逆経路を選ぶ。最初の段階では dV=0\mathrm dV=0、次の段階では dT=0\mathrm dT=0 である。二つのエントロピー変化を足すと、

ΔS=n∫TiTf(AT+B)dT+nR∫ViVfdVV=nA[ln⁡T]TiTf+nB[T]TiTf+nR[ln⁡V]ViVf=nA(ln⁡Tf−ln⁡Ti)+nB(Tf−Ti)+nR(ln⁡Vf−ln⁡Vi).\begin{aligned} \Delta S &=n\int_{T_i}^{T_f}\left(\frac AT+B\right)\mathrm dT +nR\int_{V_i}^{V_f}\frac{\mathrm dV}{V}\\ &=nA\left[\ln T\right]_{T_i}^{T_f} +nB\left[T\right]_{T_i}^{T_f} +nR\left[\ln V\right]_{V_i}^{V_f}\\ &=nA(\ln T_f-\ln T_i)+nB(T_f-T_i) +nR(\ln V_f-\ln V_i). \end{aligned}

ln⁡a−ln⁡b=ln⁡(a/b)\ln a-\ln b=\ln(a/b) を用いて、

ΔS=nAln⁡TfTi+nB(Tf−Ti)+nRln⁡VfVi.\boxed{\Delta S=nA\ln\frac{T_f}{T_i}+nB(T_f-T_i) +nR\ln\frac{V_f}{V_i}.}

エントロピーは状態関数であり、その変化は始状態と終状態だけに依存する。可逆経路はこの変化を計算するために使うが、結果は同じ二状態間の実際の不可逆変化にも当てはまる。

問4。 体積一定なので、気体は仕事を受け取らない。したがって第一法則と問1から

Qgas=ΔU=nA(Tf−Ti)+nB2(Tf2−Ti2).Q_{\mathrm{gas}}=\Delta U =nA(T_f-T_i)+\frac{nB}{2}(T_f^2-T_i^2).

気体と熱浴の全体は孤立しているので ΔUgas+ΔUth=0\Delta U_{\mathrm{gas}}+\Delta U_{\mathrm{th}}=0 である。仕事がないことから Qth=−QgasQ_{\mathrm{th}}=-Q_{\mathrm{gas}} を得る。気体については Vf=ViV_f=V_i により問3の体積項がゼロになる:

ΔSgas=nAln⁡TfTi+nB(Tf−Ti).\Delta S_{\mathrm{gas}}=nA\ln\frac{T_f}{T_i}+nB(T_f-T_i).

熱浴は TfT_f に保たれるので、

ΔSth=QthTf=−QgasTf.\Delta S_{\mathrm{th}}=\frac{Q_{\mathrm{th}}}{T_f} =-\frac{Q_{\mathrm{gas}}}{T_f}.

孤立した全体は宇宙の残りとエントロピーを交換しない。生成量は二つの変化の和である:

Si=ΔSgas+ΔSth=nAln⁡TfTi+nB(Tf−Ti)−nA(Tf−Ti)Tf−nB(Tf2−Ti2)2Tf.\begin{aligned} S_{\mathrm{i}} &=\Delta S_{\mathrm{gas}}+\Delta S_{\mathrm{th}}\\ &=nA\ln\frac{T_f}{T_i}+nB(T_f-T_i)\\ &\quad-\frac{nA(T_f-T_i)}{T_f}-\frac{nB(T_f^2-T_i^2)}{2T_f}. \end{aligned}

符号を調べるため、二つの項の積分表示に戻る:

ΔSgas=n∫TiTfA+BTT dT,QgasTf=n∫TiTfA+BTTf dT.\Delta S_{\mathrm{gas}}=n\int_{T_i}^{T_f}\frac{A+BT}{T}\,\mathrm dT, \qquad \frac{Q_{\mathrm{gas}}}{T_f} =n\int_{T_i}^{T_f}\frac{A+BT}{T_f}\,\mathrm dT.

積分区間が同じなので、被積分関数を引き算できる:

Si=n∫TiTf(A+BT)(1T−1Tf)dT>0.S_{\mathrm{i}}=n\int_{T_i}^{T_f}(A+BT) \left(\frac1T-\frac1{T_f}\right)\mathrm dT>0.

実際、A+BT>0A+BT>0 であり、Ti≤T<TfT_i\leq T<T_f では 1/T−1/Tf>01/T-1/T_f>0 である。したがって Tf>TiT_f>T_i なら積分は厳密に正である。この熱浴との接触による加熱は不可逆である。