熱力学の解答付き演習

効率と成績係数:クラウジウスの不等式によるカルノー限界

演習 29 · レッスン 6 — 熱力学第二法則

  • 効率
  • 成績係数
  • 冷凍機
  • ヒートポンプ
  • クラウジウスの不等式
  • カルノー効率
  • 二熱源機関

問題

二熱源機関では、作業流体がサイクルを繰り返し、二つの熱浴とだけ熱をやりとりする。 一方は温度 の高温熱浴、他方は温度 の低温熱浴である。 流体について銀行家の符号規約を採用する。一サイクルあたり、 と はそれぞれ高温熱浴と低温熱浴から受け取る熱量、 は受け取る仕事である。

同じ機械を、仕事を供給する熱機関としても、低温熱浴を冷やす冷凍機としても、高温熱浴を温めるヒートポンプとしても運転できる。 次の量を定義する。いずれも、得られる効用とそれを得るために供給しなければならないものとの比である:

  1. 三つの運転形態のそれぞれについて、二つの熱浴の間にある機械を図示し、矢印を実際の移動の向きに描け。、、 の符号を示し、一サイクルにわたって流体に適用した第一法則を書け。
  2. を と で表し、次に と を同じ熱量で表せ。 を示せ。効率は を超えうるか。成績係数はどうか。
  3. 流体のサイクルについてクラウジウスの不等式を書け。理想気体のカルノーサイクルを経由せずに、 を導け。等号はどのような条件で成り立つか。効率が に等しくなりえないのはなぜか。
  4. 同様にして、 を示せ。
  5. が に近づくとき、次に が に近づくとき、これら三つの上限はどのようにふるまうか。解釈せよ。
  6. 数値計算: の台所で、庫内が の冷蔵庫の最大成績係数を計算し、次に の冷凍庫について計算せよ。取り出す熱1ジュールあたり、理想的な冷凍庫は何倍の仕事を消費するか。

ヒント

ヒント
流体は二つの熱浴とだけ熱をやりとりしながらサイクルを行うので、クラウジウスの不等式は と書ける。これを効率や COP についての不等式に変形するには、符号の分かっている量を掛けたり割ったりすればよい。符号が負のときは不等号の向きを逆にすることを忘れないこと。

詳しい解答

解答
問1。 三つの運転形態は、移動の実際の向きによって区別される。

  • 熱機関では、流体は高温熱浴から熱を受け取り、低温熱浴に熱を渡し、仕事を供給する:、、。
  • 冷凍機でもヒートポンプでも、流体は仕事を受け取り、低温熱浴から熱を汲み上げ、高温熱浴に熱を渡す:、、。二つの機械は同一であり、違うのは期待される効用、すなわち低温熱浴を冷やすか高温熱浴を温めるかだけである。

一サイクルで流体は初期状態に戻るので、その内部エネルギーは変化しない:。第一法則 より、三つの場合いずれについても

問2。 熱機関では なので である。第一法則より だから、

冷凍機またはヒートポンプでは であり、第一法則は を与える。 なので である。よって

であるから、

熱機関では 、 なので 、したがって である。供給する仕事は受け取った熱を超えられず、これは第一法則だけで保証される。 これに対して成績係数は を超えうる。ヒートポンプは放出する熱をつくり出すのではなく、低温側から高温側へ運ぶのであり、受け取る仕事はその一部にすぎない。 さらに なので、つねに である。

問3。 流体は二つの熱浴とだけ熱をやりとりしながらサイクルを行う。クラウジウスの不等式は

と書け、等号はサイクルが可逆であるとき、かつそのときに限り成り立つ。 低温側の項を分離し、 を掛ける。これは不等号の向きを変えない:

熱機関では である。 で割っても不等号の向きは変わらず、

これを問2の式に代入すると

等号が成り立つのは、クラウジウスの不等式が等式になるとき、すなわちサイクルが可逆であるとき、かつそのときに限る。こうして、作業流体について何の仮定もおかずに、カルノーの第一定理と第三定理が再び得られる。 最後に、 であるためには が必要である。するとクラウジウスの不等式は となり、 と矛盾する。これがケルビン–プランクの原理である。熱機関は必ず低温熱浴に熱を渡さなければならない。

問4。 今度はクラウジウスの不等式で高温側の項を分離し、 を掛ける:

符号を反転させるときに不等号の向きが逆になる。両辺に を加え、 を用いると

両辺は正である。 で割り、次に を掛けると

問2の関係を用いると

熱機関の場合と同様に、これらの上限に達するのは可逆な機械だけである。

問5。 のとき、効率の上限 は に近づく。温度差がなければ仕事はまったく取り出せない。 これに対して二つの COP の上限は、分母 が に近づくので無限大に発散する。同じ温度の二つの物体の間で熱を運ぶには、可逆の極限では仕事がまったくかからない。 のとき、効率の上限は に近づき、 の上限は に近づく。ますます冷たくなる物体から熱を取り出すには、取り出す1ジュールあたりにますます多くの仕事が必要になる。絶対零度に向けて冷やすことは、ますます高くつくのである。 問6。 冷蔵庫については

冷凍庫については

取り出す熱1ジュールあたりに消費する仕事は である。したがって二つの最小消費量の比は である。理想的な場合でも、同じ熱を取り出すのに冷凍庫は冷蔵庫のほぼ3倍の仕事を消費する。越えるべき温度差が2倍以上大きいからである。不可逆な実際の装置は、これらの上限をかなり下回る。