熱力学の解答付き演習

熱平衡の安定性:エントロピーの凹性と正の熱容量

演習 44 · レッスン 8 — 変化の方向、平衡、安定性

  • 安定性
  • 凹性
  • エントロピー最大
  • 熱容量
  • 熱平衡
  • 基本関係式

問題

ある物体が基本関係式 で記述される。問1から問3では、その体積と粒子数は固定されている。 そのエントロピーを単に と書き、定積熱容量を で定義する。

断熱された剛体の容器に、この物体の同一の二つの部分が入っている。二つの部分は体積も粒子数も等しく、 固定され、粒子を通さない透熱性の壁で隔てられている。全エネルギー は固定されている。 第一の部分のエネルギーを とすると、第二の部分のエネルギーは である。

  1. 容器の全エントロピー を書け。一様な配分 が を停留させることを示し、この条件を解釈せよ。
  2. を について二次まで展開せよ。 がどのような条件を満たすとき、一様な配分はエントロピーの極大となるか。逆の場合には何が起こるか。
  3. を示せ。これより、熱平衡の安定性が を課すことを導け。物理的に解釈せよ。 が負であったら、二つの部分の間のエネルギー交換はどのように進むだろうか。
  4. 次に、 を固定した単原子理想気体を考える: ここで は定数である。その温度と熱容量 を計算せよ。レッスンの二変数の凹性の判定条件を用いて、 が について凹であることを確かめよ。
  5. 最後に、モデル (、)を考える。この関係式が示量的であることを確かめよ。温度を計算し、次に熱容量 を と の関数として計算せよ。このモデルは安定な均一物質を記述できるか。凹性の判定条件を用いて結論せよ。

ヒント

ヒント
問3では、関係式 を、合成関数の微分を用いて で微分する。 は に依存し、 である。 問4では、二変数の判定条件は 、、 と書ける。

詳しい解答

解答
問1。 二つの部分は同じ関数 で記述され、エントロピーは加法的である:

で微分する。 の導関数は なので、

のとき、二つの部分は同じエネルギーをもち、導関数はゼロである。一様な配分は停留点である。 なので、一般の停留条件 は二つの部分の温度が等しいことであり、 これは熱平衡の条件である。

問2。 テイラーの公式 を用いて、各項を のまわりで二次まで展開する:

これらを足し合わせると、一次の項は打ち消し合う:

ならば、どのようなエネルギー移動 も全エントロピーを減少させる。 一様な配分は極大であり、したがって安定な平衡である。 逆に ならば、どちらの向きであれ小さなエネルギー移動は孤立系のエントロピーを増加させる。 するとこの移動は自発的に起こりうる。一様な配分は、停留点ではあっても不安定である。

問3。 定義により であり、 と を固定すると は の関数である。この関係式を で微分する。 の についての導関数は なので、合成関数の微分により

ところで なので、

なので、問2の安定条件 は と同値である。

解釈: と仮定し、小さなエネルギーが部分2から部分1へ移ったとする。 エネルギーを受け取った部分1は冷え、エネルギーを失った部分2は温まるだろう。 熱は自発的に高温側から低温側へ流れるので、部分1はさらに多くのエネルギーを受け取ることになる。 差は解消されるどころか増幅されてしまう。 ならば逆である。 エネルギーを受け取った部分は温まり、もう一方に熱を渡し、差は解消される。 問4。 を固定して を で微分する:

二階導関数を計算する:

また は に依存しないので である。行列式は

判定条件の三つの条件はすべての点で満たされている。理想気体のエントロピーは について凹であり、 その平衡は安定である。

問5。 と に を掛ける:

したがって、この関係式は示量的である。その温度は

を満たす。 を固定すると は に比例し、その導関数は である:

熱容量は負である。問3より、このモデルは安定な均一物質を記述できない。 凹性の判定条件で直接確かめることもできる。 であり、すでに第一の条件 に反している。 この関係式で記述される物体は均一なままではいられない。問3で述べたように、 その二つの部分の間のわずかなエネルギーのゆらぎが増幅されるからである。

したがって、示量性だけでは関数 を受け入れ可能な基本関係式とするには不十分である。 安定性のためには、さらに凹性が必要である。それでも負の熱容量は自然界に存在する。たとえば恒星がそうである。 しかしそれは重力が支配する非加法的な系に限られ、そのような系にはこの推論は当てはまらない。